La goutte de yeux



夢から抜け出した高遠は、最初に一が居るはずの隣を手触りで確認した。
だが、そこにはシーツのざらっとした手ごたえだけで、人の体温がほんの少し感じられる
ほどの温もりしか蓄えていない。
「はじめ?」
高遠は小さく呟くと、目をあけて確認してみる。
やはりいない。
ゾワッと全身の毛穴が開放される。
素早い動作で上半身をあげ、左右を見渡す。
強盗などに荒らされた形跡は無かった。つまり。
「はじめ!」
声が自然と荒くなる。
やっと愛する物を見つけたのに。
やっと愛する物が来てくれたのに。
彼が、自ら、出て行った?
「高遠、起きた?ちょっときてみろよ。」
高遠ははっと声のした方に顔を向けた。
六月の、冷ややかな朝の冷気が流れ込むベランダに、一は居た。
ちょうど顔を出し始める、太陽に目を向けたまま、少しも離さない。
高遠は無言でその背中を見つめた。
彼がベッドにいなかったことで、どれほど高遠が動揺したか。
一は知っているのか、知らないのか、じっと太陽を見ている。
「…俺、初めてだよ。太陽が昇ってくるの見んの。」
高遠はベッドから抜け出すと、一の隣に歩いていった。
一の目は、キラキラと輝いている。
「日本じゃ、ビルが多くてこんなの見れないし、さ。」
高遠は、そう言いながら自分に顔を向ける一に、「珍しく早起きですね?」とは言わなかった。
ただ、息を飲み込んで、一を包んだ。
「えッ?」
「…行かないでください。」
一は、いきなり自分を抱擁した高遠に、間抜けな声を出した。
高遠は、続ける。
「僕に何も言わず、行かないでください。君がいないと、僕は…。」
一はその言葉を聞いて、初めて高遠の心が読めた。
高遠は、一がベッドにいなかったことで、恐怖に襲われたのだ。
愛する物を失った、恐怖。
それは、どんなホラー映画よりも。どんなお化け屋敷よりも。
ずっとずっと、怖くて、恐い。
「大丈夫、高遠。」
一はゆっくりと、高遠の背中に腕を回した。
「俺、どこにも行かないから。ずっとあんたと一緒にいるから、さ。」
そう言った直後、高遠の顔がうずまっている一の左肩に、生暖かい物が染み出した。
泪。
めのしずく。
高遠はそれほど、一を愛していた。
一もそれが分かって、腕に力をこめた。
「俺、居るから。」
毎日昇ってくる太陽みたいに。
「世界のどこに居ても、あんたに俺が見えるように居るから。」
フランスでも。
イギリスでも。
日本でも。
「一緒に居るから。」
朝日が、二人の顔を眩しく照らす。
暖かい、オレンジ色の、希望の光が。
「…一緒に居てください。僕と…。」
震えるような声で、高遠が囁いた。
一は頷き、高遠の肩に顔を埋めた。

ゆっくりと、太陽は昇る。
世界のどこに居ようと、朝には必ず昇る。
地球から同じ距離に同じ距離に、居続ける。
希望色の光と共に。

永遠に・居る。



………………………。
え~。とっても意味不明な文章に御付き合いいただき、ありがとうございました。
高遠が一のことを心配して探す、というテーマだったのですが、いつのまにかこういうことに…。
題名は、フランス語で「目の雫」という意味です。
甘い、のでしょうか?
よく分かりませんが、5000Hit、おめでとうございます!
                              Mei
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とっても素敵な、切なげで甘々な「高×金」小説v
舞さま、ありがとうございますーvvv!
5000HITのお祝いのお言葉と共に、こんな素敵なプレゼントまでいただけるとは、
想いもしませんでした。
まさに、Surprise!
こんなに嬉しいことは、サイトやってて、初めてです!!
サイトをやって、本当によかったです(涙)。

舞さまは、サイトを持ってらっしゃらないということなので、こんな素敵なお話を
ワタシが独り占めしているのは、大変勿体無い!と思いまして。舞さまが快く
サイトUPOKをくださいましたので、こちらにUPさせていただきました。

舞さま、ありがとうございましたvvv!


05/06/21UP
再UP14/08/25


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