CARELESS ACTION
「なぁなぁ、高遠」
せがむ様に、呼びかけられて振り向いた。
その先にあったものは------。
------震えたつほどの色香を纏った恋人のしどけない姿だった。
それに魅入ること数秒。
時を刻む針は、さほど進んではいなかった。
なのに、恋人が剥れるのには充分な時間だったようだ。
「なんだよ、その阿呆面。
どうせ似合わないんだったら、笑い飛ばしてくれればよかったのに」
髪を掻きあげ、誘うような仕草をして自分を惑わせた少年は、拗ねながらも歳相応の表情で私を睨み付けている。
「いったい、何の真似ですか」
ようやく、言葉が口から零れた。
姿勢が少し前屈みなのは、致し方がないことだろう。
私の発した台詞に、キョトンとしながらもすぐに意味を理解して、言葉が返ってきた。
「この間、一緒に行ったじゃん。その時に観たショーパブで一人いただろう。
ものすっごく、色っぽいネーチャン。あのマネをしたんだけど、不評だったな」
冒頭は弾みがつき勢いがあったのに、語尾は沈んだ口調で告げられた。
「あぁ、アレですか」
記憶を探りながらも、返答する。
確かに、はじめがわぁーわぁーと言いながら騒いでいたストリップダンサーが一人いたけれど、自分は、さほど興奮しなかった。
それより、嬉しそうに頬を紅潮させ、私に話しかける彼ばかりを見ていた気がする。
そんなことを思い出していたら、はじめが目の前に立っていた。
「なぁ、高遠」
「なんです」
真剣な瞳で、私を見詰めている。
何かを、告げようとしている目だ。
「高遠も、やってみて」
意味が理解できない。
「何をです」
疑問を口にする。
「さっきの俺の真似。というか、ストリップのオネーチャンがやっていた表情で、出来たら髪も掻きあげて欲しいんだけど」
告げられた内容を脳は理解したが、どうして自分がそれをしなくてはいけないのかが分からない。
それでも、はじめの瞳の真剣さに乞われて、やってみることにした。
着ていたシャツの前をほどよく開けて、先程見た光景を思い出し、髪を掻きあげてみる。
その効果は、すぐに現れた。
「もう……、いい」
耳まで顔を真っ赤に染めた彼が、制止を求める。
仕草を止めた私を見て、鼻を手で押さえていた。
「うぅー、刺激強すぎ」
「大丈夫ですか」
俯いた肩に手を添える。
「マジ、ヤバイから。絶対に、このモノマネ禁止。
誰かに、強制されてもするなよ」
頬の赤みは未だに引かず、くぐもった声を発しながらも強い口調で告げられた。
「別に、誰にもしませんが」
こんなこと。
と、続く台詞を口の中で飲み込む。
「では、はじめも約束して下さい」
「何を?」
視線を私に戻し、不思議そうに見詰められる。
「先程の真似は、もうしないと」
「あぁ、アレね。高遠に頼まれても、もうやらねーから、安心しろよ」
それは、ちょっと。いや、かなり惜しい気がする。
あの表情、あの仕草は、何度でもお目にかかりたいものだ。
だが、はじめを安心させるために、ひとまず頷いておく。
「では、約束ですよ」
「あぁ、約束だ」
差し出した小指に、指を絡めあわせる。
また、どこかであのはじめにお目にかかれないものだろうか。
と、頭の中でそんなことを考えていた。
オマケ
「どうして、あんなことを急に思いついたんですか」
疑問に思っていたことを恋人に聞いてみた。
「あんなことって、あぁ、アレね」
そう、アレだ。
自分以外には、絶対に見せられない(見せたくない)姿。
目も身体も、どこもかしこも自分を誘い、しどけない姿で魅了し惑わせた。
突然、何の前触れも無く何故しようと思い立ったのか。
それが、疑問だった。
「メルロの店で、日本で言う忘年会みたいなことをしようって話しが出てさぁ。
それで余興にやってみようかなと、わわわっ」
冷静さを投げ打って、続く彼の言葉を遮る。
「絶対に止めて下さい」
私の真剣さに気圧されたように、彼が首を縦に振る。
頷く姿を見て、ホッと息をつく。
「何だよ。そんなに強く言うくらい変だったのか、俺のモノマネ。
分かってる。約束したもんな。絶対にやんないよ」
彼が拗ねた口調で、でも、やらないことを誓ってくれた。
更に、言葉が続く。
「高遠も、ダメだからな。オマエもモノマネ禁止。他の人の目の前で絶対にすんなよ」
ビシッと目の前に指が突きつけられる。
その指を、軽く口に含む。
「うわっ」
彼が慌てて、指を引き抜く。
「他の人の目の前ではダメでも、はじめの前ならいいのでしょう」
「そっ、それは……、やっぱダメ。刺激が強すぎる」
視線を逸らし、モジモジと居心地悪そうに身体を揺らしている。
それならば、
「では、私の前でもう一度やって下さい」
「何を?」
「先程のモノマネ」
一呼吸の間が開く。
「ぜってー、やらねーよ。高遠の阿呆面なんて滅多に拝めるものじゃないけれど、あんな反応されるならしない方がマシ」
声を張り上げて拒絶を示す恋人に、自分の迂闊な反応をどう説明しようかと少しだけ頭を悩ます私だった。
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『咲く花』の里見さまからいただいた短編でございます。
うちの日記絵に萌えて書いて下さったSSなのですが、
なんという萌えシチュっ!
もーやばい、絶対やばいっ。
うちの設定で書いてくださったので、メルロさんも出してくださって、
嬉しい限りなのですv
タイトルはご自由にに決めてくださいとのことでしたので
竹流が決めましたが、イメージを壊してませんように。
里見さま、どうもありがとうございましたvv
大切にいたしますね。
この萌え~なお話を書いて下さった里見さまのサイトはこちらv
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明金高金素敵小説サイトさまですv
08/10/17UP
再UP14/08/25
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