虜
今夜は、満月なのだろうか。
青白い月明かりが、ベランダの薄いカーテン越しに、揺れている。
昼のような、力強い光では無いのに、胸の奥深くにまで突き刺さるような鋭さで、闇を照らす、夜の太陽。
月明かりに、蒼く照らし出されるこの部屋の中には、あえかなきみの声と淫らな水音が満ちていて、ぼくは、きみの中で、深く溺れている。
指を、絡めて。くちづけを、交わして。
まるで聖女のように、穢れ無き魂を持つ、きみを、汚す。
闇に白く浮き立つきみの肌に、くちびるを落として、紅い花びらを散らそう。
月の光の中で、それは紅くきみの肌を彩って、美しく咲く、刻印。
蒼い闇の牢獄に、きみを捕らえる。
きみの、すべては、ぼくだけのもの。
「…はっ…あっ……たか…と…お…」
きみが、切なげな声で、ぼくを呼ぶ。
ああ、もっと、聴かせて、きみの声を。
そして、もっと、乱れてみせて。
ぼくの、腕の中で。
「…っ…ああっ!…」
短く悲鳴を上げながら、その白い喉を見せ付けるように、逸らして。
濡れた唇で、ぼくを、誘う。
「感じる?」
耳元で囁くと、きみは恥らうように、頬を染めて、頷く。
でも、それじゃあ、駄目だよ。
「ぼくを見て。ねえ、気持ちいい?」
きみを揺さぶっていた、動きをやめて、ぼくは意地悪をする。
答えてくれなければ、あげないよ? と。
きみの全身が、羞恥に染まる、一瞬。
きみは、知っているんだろうか。
この瞬間、きみは、どんな女性も叶わないだろうと思うほどの、色香を醸し出す。
薄く眼を開けて、ぼくを見つめる、きみの瞳に宿る、淫らな光。
それは、どんなに美しい月の光よりも、ぼくの心の奥深くまでを、貫き通して、煌めく。
ゆっくりと、躊躇うように、きみの紅い唇が開かれて、言葉を紡ぐ。
囁くように、唄う様に、ぼくの耳に心地良い、響きで。
「…すごく、気持ち…いい…よ…だから…もっと…」
言いながら、すべてを欲しがるように、ぼくに向かって手を差し伸べる。
乱れた長い髪が、きみの頬や、首筋に纏わり付いて、悩ましげなきみの表情を、なおさら官能的に見せている。
とても、綺麗だ。
昼間は、幼いとさえ感じさせるきみなのに、夜は、まったく表情を変えて、ぼくを虜にしてしまう。
ぼくのすべては、きみのものだよ。
きみが欲しいだけ、あげる。
全部。
この身体も、この…命すらも。
きみが欲しがるのなら。
すべてを、捧げよう。
月明かりが、揺れている。
胸を射る、鋭さを、持って。
蒼い、闇の、牢獄で。
捕らえられているのは…
どっち…?
05/07/04 了
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え~、突発ものエロSSで、ございます。
この程度なら、「恋人部屋」でもいけるかな? とか、考えたんですけど、
あまりにも、やっぱ、シチュエーションが、大人でしょう。ってことで、こちらに。
これ、まさか、アップするとは思わずに書いてたんですよ。
他の作文を書いてたときに、あんまり調子出なくって、それで、ど~しても、高遠くんが書きたくなっちゃって、でも、マジな話はパスだったんで。
じゃあエロで…と、戯れに、書き出したものだったんですね~。
だって、アップする気、無かったもんですから。
が、適当に書いて、それから読み直したら、意外と、ワタシ好みな感じになりつつあって。
で、も少し、手を入れてみたのです。
たまには、こんなのも、いかがでしょうか?
05/07/05UP
14/09/30再UP
-竹流-
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