あなたのすべて
慈しむように、頬に触れる温もりに、意識が浮上した。
と、同時に、鈍い痛みを感じる。
たかとおと、深く繋がりあった場所に。
きっとまた、出血したのだろう。
小さな傷でも、あの場所は、意外なほど真っ赤な鮮血が、考えるよりも多く、流れる。
青いシーツを、黒く血に染めて。
おれは、動けなくなって。
あんたは、後悔する。
それは、今までにも、何度となく繰り返された、残酷な睦みあい。
知ってるよ。
あんたの中には、自分でもどうすることもできない、何かがいて。
時折、目覚めては、おれを責めることで、何かを得ようとするんだ。
おれが、いくら頼んでも、止めてはくれなくて。
おれの身体を傷つけて、おれが意識を失って。
そうして、ようやく、そいつは満足して、また、眠りに就く。
正気に戻ったあんたは、意識の無いおれに、やさしく触れながら。
失いたくないと。
どこにも、行かないで欲しいと。
身体を、震わせながら、許しを請う。
繰り返し、繰り返し。
馬鹿だなあ、たかとお。
おれが、離れるわけ、ないのに。
どれだけ、おれが、あんたのことを好きなのか。
あんたは、全然わかってないから。
不安になるんだね。
目を覚ましたおれは、でも、目を閉じたまま。
あんたが、ずっと見つめているのをわかってて、眠った振りを続けよう。
そうして、いきなり、抱きしめてあげよう。
あんたは、きっと、驚いて。
けれど、今にも泣きそうな表情で。
幸せそうに、切ない笑みを浮かべるだろう。
何も言わずに、やさしいキスをくれるだろう。
それでいいんだよ。
本当は。
なにも、いらないんだ。
なにを、されてもいいんだ。
おれは、あんたの傍にいられるだけで、しあわせなんだ。
魂がね。
震えるんだ。
あんたの全部が、好き、だって。
いつか、あんたが、あんたの中のそいつに、食い尽くされてしまって。
おれを、どうにかしてしまう日が来ても。
それでも、おれは、思うだろう。
その、最後の瞬間まで。
傍にいられて、しあわせだった、と。
だから、なにも、怯えないで。
なにも、怖がらないで。
おれのすべては、あんただけのもの。
いつか、あんたが、おれのために、命を掛けてくれたように。
おれは、あんたとの恋に、命を掛けてる。
ただ、それだけのことなんだ。
だから、その時までは、おれだけのひとでいて。
あんたのすべてを。
おれだけに。
与えてください。
06/01/09 了
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特に、意味は無いんですが、時折書きたくなってしまう、はじめちゃん心情モノ。
なんとなく、裏に置いてある「愚か者の恋情」に繋がってそうです。
びみょ〜な出来だとは思うんですが。
作文にも、昇華できませんでしたし…ね。
だから、雑文…なんですって〜(笑)。
こんなですが、読んでくださると、やっぱり嬉しいですv
読んでくださった方、ありがとうございましたvv
06/01/15UP
−新月−
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