仲直り



ありえないことが、起こっていた。

なんと、あのエロい高遠(エロいは余計です(高遠談))が、もう三日もおれに指一本 触れてこない。
ほんとに、まったく。
おれのIQ180の頭脳が、これはヤツもかなり怒っている!と見た。
まあ、ぶっちゃけ、喧嘩をしたのだ。
きっかけは、ほんの些細なことだったんだけどね。
ただおれが、意地を張りまくって高遠を突っぱねた挙句、
「もう、高遠なんか嫌いだ!」
と、のたまったのが決定打だった模様。

おれが悪かったのはわかってるんだけどさ、意地張った手前、素直に謝れなくて…

でも、それからずっと口も利いてくれないし、おれを見てもくれない。
夜はソファーで寝ちまうし。

こんなこと初めてで、おれもどうしていいのか、わからなくって。
それで、気がついたら、三日も経っていたんだ。

でも、高遠も大概しつこいよな。
男だったら、すぱっと頭切り替えたり出来んのか!
…とか、考えてるおれが一番女々しいし…
なんか高遠の態度にも腹立ってるし。
ああ、もう、どうすりゃいいんだ〜〜〜!

悩む頭を抱えながら居間のドアを開けたおれは、一瞬、息を飲んだ。
高遠が窓際に椅子を寄せたまま、壁に頭を持たせ掛けるようにして、そこでうたた寝していた。
無造作に膝に置かれた手の下には、開いたままの本がある。
読みかけたまま、眠ってしまったのだろうか。
けれどその様子は、まるで一枚の絵のように、美しく印象的だった。

ああ、たかとおは、やっぱり、綺麗だなあ。

今まで悩んでいたことも忘れて、おれは吸い寄せられるように傍に寄って、その寝顔を覗き込んでいた。

意地を張っていたことが、馬鹿みたいに思えた。
意地なんかよりも、高遠のほうがずっと大切なはずなのに、今までおれは、何を悩んでいたんだろう? 何を怒っていたんだろう?

一番、大切なものを、忘れていた気がする…

「ゴメンな、たかとお、大好きだよ」

高遠の唇に、そっと唇を重ねて。
そのまま、寝かせておいてやろうと思ってたら、いきなり、その寝ていたはずの当の本人に抱きしめられていた。
膝の上にあった本が、ばさりと、音を立てて下に落ちる。
軽く合わせただけの口付けは、気がつくと、かなり濃厚なものに変わっていて、高遠の手が、あらぬところに触れてくる。
もがきにもがいて、やっとのことで長いキスから解放されたおれは、開口一番、怒鳴っていた。

「あ、あんた!おれを騙したな!!」
「何を言ってるんですか、本当に寝てたんですよ?きみが起こしたんじゃないですか」
「う…じゃあ、いつ目が覚めたんだよ」
「え〜と、きみが部屋に入ってきたときv」
「やっぱ、騙してたんじゃん!寝たフリなんかして!」
「でも、謝れて、よかったでしょう?」

おれの身体を抱きしめたまま、嬉しそうに綺麗に微笑んで。

あんた、絶対、確信犯だな!
騙されたのがくやしくて、何よりも恥ずかしくて。

「もう、やっぱりあんたなんか、嫌いだ!」

「おや? 今さっきは、大好きだと言いましたよね? じゃあ仕方ありませんねえ、どちらが本当なのか、ベッドで確かめてみましょうか?」

暴れるおれをいとも簡単に抱き上げると、足取りも軽く、高遠は寝室に向かったのだった。



05/10/04   了
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日記SSSでござい〜。
はいっ、何の意味もございません!
もう、好きにしてって感じのふたりってことで///

06/02/01UP
−新月−

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