七夕U





「今夜は、晴れませんでしたねえ」

高遠が窓から空を見上げてたから、珍しいな〜とか思って見てただけなのに、いきなり残念そうな声を上げたんで、おれは、マジちょっとビビッていた。

「…なにそれ…?」

不審な声が出るのも、いたし方ねえって感じだろ?
なのに、

「はじめって、意外と薄情者ですね!」

って、おいおい、何の話だよ。
相変わらず、マイペース過ぎるあんたの頭の方が、おれとしては心配だよ。
なんて。
どうやら、あからさまに、おれは考えていたことが顔に出ていたらしい。

「…なんか、ぼくのことを酷く不審な目で見ている気がするんですけど、別に、変なことは言ってませんよ?」

ホントかよ…

「去年は、きみの方がこの空を見上げていたのに…」
そう言われて、思い出した。
「あっ、今日は七夕だっけ?」
「そうです v 」

やっと意味が通じたとばかりに、高遠が嬉しそうに微笑む。
あ〜、ごめん。
時々、高遠が突拍子も無いこと(ばっかり)言うから、またそうかと思っちゃって、構えちゃったよ。
だってさ、『あ〜んなこととか』『こ〜んなこととか』を、いきなり言い出して、おれ、心臓が幾つあっても足りねえと思うことが(腐るほど)あるからさ。
でも、そっか。もう、七夕なんだな。

「ほんとだ、今夜は星ひとつ見えないな」
「でしょ?」

高遠の隣に立って、同じように暗い空を見上げる。
確か去年は、とてもよく晴れた星空だったんだよな。
あれから、もう一年も経つんだ。
そう考えると、なんだか胸の奥が、あったかい。
去年と同じ場所で、ふたりで同じ空を見上げている幸せ、なんてのを、柄にも無く噛み締めちゃったりな ///

と、また高遠が、残念そうに呟く。

「こんなに曇ってても、逢えるんでしょうか?」

一年に一度だけの逢瀬なんでしょう?
言いながら、おれを見るから、こう答えてやった。

「大丈夫だよ。日本じゃさ、今、梅雨まっさかりで、大抵は雨か曇りなんだから。だからきっと牽牛はさ、天の川が洪水だろうがなんだろうが、泳いで渡っちまうんじゃねえの?」
「…なんだか、聞いたことがあるような話ですねえ…」

そうか? とかって、すっ呆けながらくすくす笑っていると、突然、肩を抱かれて、高遠の胸に引き寄せられた。

「ちょっ、なにっ?!」
「じゃあ、彼らに負けないように、ぼくたちも熱い夜を過ごしましょうか v 」
「なんでそんな話になるんだよっ!!」
「いいの、ぼくが今、決めたんだから vv 」
「たか…」

そのまま、窓は閉じられて。
部屋の明かりが消えた後、おれたちがどんな夜を過ごしたのかは…

絶対に、秘密だ。



06/07/07   了
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すいません(汗)。
とりあえず、七夕だったんで、急遽仕上げました。
前のお話を読んでないと、わからないお話になっているんですけど、30分ほどで
書き上げたんで、お許しくださいませ。

06/07/07UP
−新月−

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