おまけSS




「マグカップ、割れてしまいましたね…」

キッチンを片付けながら、割れた皿を集めているときに、気がついた。これは、ふたりで蚤の市に出かけて、気に入って購入したものだったのに…

砕けた破片を拾い集めていると、幾つかの思い出が胸を過ぎる。
そうして、気が付く。
こんなカップ、ひとつにしても、こんなにもきみとの思い出が、詰まっていたのだと。
皆、宝石のように、大切な記憶だ。

形あるものは壊れる。…一体誰の言葉だったろう。
けれど、確かにそうだ。 この
世に、不変のものなど、ありはしない。 人の心も
、きっとそうなのだろう。 一番大切なこ
とは、いつも眼に見えないからこそ、たいせつで。 だからこそ、ひと
は、形にこだわるのかもしれない。 記憶の欠片を、そこに
閉じ込めてしまうために。 なのに、愚かなぼくは、い
つも大切なものを傷つけて、壊してしまうんだ。

「あ〜、そりゃ、仕方ね〜んじゃね?」

突然、降って来たきみの言葉に、我に返る。ぼんやりしていたのは、一瞬か。
高遠、あのとき、ぷっつりと切れちゃってたもんなぁ…
続けてぼそりと呟かれた一言に、身がつまされる。
「…すみません…」
「何でも謝って済むんだったら、警察なんかいらね〜っての」
モップをかけていた君は、急に、ビシイっとぼくに人差し指を突きつけて、言い放った。
「今度の蚤の市に、また、一緒に買いに行こうぜ」
そして、いつものように、片目を瞑って、二カッと笑う。

きみの思考は、いつも前向きで、ぼくはどれだけ救われているか知れない。
そうだね、大切なのは、思い出じゃなくて、今、目の前にいる、きみなんだ。
壊れても、また、ふたりで探しに行けばいい。
何度でも、また、やり直せばいい。
そうして、新しい思い出を、紡いでゆこう。
きみとふたりでなら、それができる。

きっとこれから、素敵な思い出が、たくさんできるはずだから…



しかし、と、ぼくはここで一言、但し書きをつけたい。
はじめ、人を指差すのは、ここ(外国で〜す)ではひどく失礼に当たるから、絶対にやめなさい。いいですね?

でないと、お仕置きが待っていますからv



05/06/06   了

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何にも無い、おまけでした。
ただ単に、お片づけしてるふたりが、書きたかったのかなあ?
よく、わかりませんが、でも、物に思い出って付き物だから、
壊してしまって、それに気付く高遠くんってのが、書きたかったのか?
非常に前向きなふたりを書きたかったのか?
書いてるときは、一生懸命書いてるんですが、書き終わると、もひとつ
何が書きたかったのか、わからなくなっちゃうのが…
ボケか? ボケが始まったのか?! 怖い今日この頃…
一応、ここはフランス、って設定で書いてます。

05/06/07UP
−新月−

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