こわい話 伊角バージョン
基本的に、お化けの類などあまり信じていないおれにとって、その夜、突然やって来た和谷
が話し出した出来事は、にわかには信じがたいものだった。
「信じられないかもしれないけど…ほんとなんだよ…」
青い顔をして、怯えきっている和谷の姿を目の当たりにしていなければ、
「驚かそうと思っても駄目だぞ!」とか言って笑い飛ばしているところだったろう。
それほどに和谷の話は怪談めいていたんだ。
真夜中の電話 Ⅱ
「もう、あんな部屋、怖くて帰れねえよ…なあ、伊角さん。暫くここに置いてもらえないかな? な、このとうり!」
言いながら、目の前で手を合わせる和谷。
いや、でもこの部屋で男二人は無理だろう? 1DKしか無いんだぞ?
「う~ん、どうしたものかな…」
おれが腕組して考え込んでいると、いつの間にか和谷がおれのベッドの中に潜り込んでいる。
「お、おい、和谷? 何してるんだ!?」
「わりぃ、伊角さん…なんか…安心したら眠く…なっちまって…」
「おい! 和谷! 和谷って!」
「す~…」
「…そうか…おまえ、おれに床で寝ろって言うんだな…」
夜中に起こされ、気持ちの悪い話を聞かされ、挙句の果てにベッドも取られ…
「…おれ、なんでこんなキャラなんだろう…」
はあ~っと、重い溜息が零れ出る。
とにかく、早くなんとかしないと、このままじゃずっと床に寝かされる羽目になりそうだ。
ふと、ベッドサイドにあるテーブルの上を見ると、自分の携帯電話が置いてあるのが目に入った。
携帯…か…、あれ? 何か思い出しかけたような…
何だろう? 和谷の話に何か関係ありそうな…
そして、おれがようやくそのことを思い出した頃には、窓の外はすっかり明るくなっていた。
朝一番におれは進藤に電話をかけた。たぶん、おれの記憶に間違いが無ければ、これで和谷の問題は解決するだろう。
まだ寝ていたらしく、携帯からは酷く眠たそうな声が返ってきた。
「ん…ふぁい…もしもし?」
「進藤、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ん? なに? 伊角さん? どうしたの?」
「実は今、和谷が家に来てるんだけどな…」
おれは掻い摘んで事の次第を進藤に話して聞かせた。
…大爆笑。
これ以上笑えないってくらい笑ってたな。
進藤、やっぱりおまえの仕業か…
はあ~。もう、溜息しか出てこない。
頼むから! いい加減にいたずらっ子みたいなことはやめろって! とばっちり食うのはいつもおれなんだから!!!
「伊角さん、ごめ~んv」
って、おまえ、そんなことこれっぽっちも思ってないだろ!
そして進藤とは、夕方、指導碁の仕事が終わってから、和谷のマンションで落ち合うことになった。
おれがマンションの入り口に差し掛かったとき、丁度こっちに向かって歩いてくる金色の前髪を見つけた。進藤だ。隣に居るのは本田らしい。
そうか、あいつもグルだったのか…
「あっ、伊角さ~ん!」
おれに気がついて、進藤がこっちに向かって手を振りだした。
ふふ、進藤はいつまでも幼いなあ…。
って、あれ?そんなにぶんぶん振らなくていいよ。いや、ちっちゃい子じゃないんだからさ。
恥ずかしいだろ?って、走って来なくていいよ! 手を振りながら! おれが恥ずかしいって! うわ~! 来た~!!
慎一郎の心、進藤知らず。
なんか…もう、疲れちゃった気がするよ…
ぐったりと肩を落とすおれに気付きもしないで、すぐ側まで来たこの万年いたずらっ子は、
くりくりしたおおきな瞳でおれの顔を覗き込んだ。
「あれ? 和谷は?」
何事も無かったかのように、ナチュラルに進藤は言う。こいつには恥ずかしいとか、そういうのを感じる回路が無いんだ。きっとそうだ。
「和谷にも来るように言ったんだけどな。駄目だそうだ」
…疲れが声に出ちゃってるよ、おれ。
「ふ~ん、そうなんだ? 自分家なのにあいつも怖がりだな~。あはは」
あははって、おまえのせいだろ!って、突っ込みたいのをぐっと堪える。
余計なことを言ったら、また何かしでかしそうで怖い。違う意味で怖い。
それに、どれだけ和谷がびびってるか…を知ったら、よけい笑うんだろうなぁ。きっと。
はあ~~~~~。
進藤って、結構かわいい顔してるけど、中身は悪魔だ…
黒くて先が矢印みたいにとがったしっぽが付いてても、違和感無いと思うぞ。おれは。
「こら、進藤、おれたちのせいでこうなったんだからな! 和谷や伊角さんにすまないと思わないのか!」
おっ、本田が笑っている進藤をゲンコで叱ってるぞ! 流石に進藤より大人だな、本田!
頼もしいぞ!
「アイタ! って、分かってるよ!」
「分かってないだろ!」
「なんだよ! 本田さんだっておれがこの話したとき大笑いしたじゃんか!」
「え…あれは…ゴホゴホ」
ふ~~~ん、そうか、やっぱりおまえも笑ったんだ…
さっきのは撤回。本田も進藤と同レベル決定だ。
「こんな所で話してても仕方ないから、取りあえず中に入ろうか…」
おれはすでに疲れきった気分で、5階建てのマンションの入り口のドアを潜った。
和谷の部屋は3階にある。おれたちはエレベーターから降りると、同じ形のドアが両側に並ぶ廊下を並んで歩いた。すでに灯りが点されている廊下は暗くは無いはずなのに、青白い蛍
光灯のせいだろうか、少し薄暗く感じる。
「和谷の部屋は…ここだな」
和谷の部屋番号を確認して、借りてきた部屋の鍵を鍵穴に差し込む。右に回すと、ガチャリと鈍い手ごたえとともにロックが外れる音がやけに大きく聞こえた気がした。
部屋の中に入って、ちょっと驚いた。いや、和谷が慌てて部屋を飛び出したのは聞いていたけど、本当にそうだったんだなあと、改めて感じたというか…
「うわ~! 全部つけっ放しじゃん!」
進藤がおれの思ってることを代弁するかのように声を上げた。
そう、部屋の電灯はもちろん、パソコンの電源もラジオのスイッチも入ったままだ。
パソコンの低い稼動音とラジオから流れてくる軽快な音楽。今まで誰も居なかった事を知っているのに、つい今しがた迄、誰かがここにいたような錯覚を覚えてしまう。
「…なんか、気味悪いな…」
…さっきから、意見が合うな。進藤。
おれは黙ったまま必要の無い電源を落として回った。だって、おれがそういうことを言うのはまずいだろう? なんとなくだけど。
「さてと、さっさと用事を片付けてしまおうか。で、何処に隠したんだ?」
おれの言葉に進藤と本田が顔を見合わせた。
「えっとぉ…テレビの後ろ…だったと思うんだけど…」
歯切れ悪く進藤が答えた。本田もその隣で頷いている。
「テレビの後ろ? クローゼットじゃないのか?」
「そう」
進藤が答えている間に本田がテレビを動かし始めた。
「やっぱりそうだ!」
斜めにずらしたテレビの後ろを覗き込んで本田が声を上げた。おれと進藤も一緒に覗き込む。
うっすらと埃の溜まったテレビ台の上に、一箇所、特に埃の薄い場所があった。小さな長四角で、ちょうど携帯くらいのサイズだ。
「間違いないよ。ここに置いてあったんだ」
真剣な顔をして本田が言う。
「じゃあ、誰がクローゼットの中に入れたんだろう?」
「おれたちじゃねーよ?」
なぁ、とまた二人で顔を見合わせている。嘘は言ってなさそうだしなあ。じゃあ、あの時一緒に居たメンバーの誰かか? う~ん?
「取りあえず、クローゼットの中を調べたらいいんじゃねえ?」
首を傾げるおれに、進藤が提案してきた。そうだな、何よりもそっちが先だな。
おれたちはクローゼットの前に行くと取っ手に手をかけた。
「すごく固いらしいぞ。和谷も一度試してみたらしいけど、びくともしなかったって言ってたからな」
「そんな固てぇ戸、誰が開けて『あれ』中に入れたんだろ?」
「まったくだな! ホントいい迷惑だ!」
…本田、先に自分がしたこと、忘れてるだろ? いい迷惑なのはおれの方だと思うぞ?
って、もういいよ…考えても疲れるだけだから…
「1,2の3で思いっきり引っ張ってくれ」
ネガティブ思考になりながらも普通に振舞えるおれって、かなり苦労性だと自分でも思う。
大体、どうしておれはこんな人ん家のことまで心配してこんなことしてるんだろう…
いや、これ以上は言うまい。言っても仕方が無いじゃないか慎一郎。これはもう、おれの性なのさ…
はあ~~~~~~~~~。
「なに長い溜息ついてんの? 伊角さん?」
「い、いや、何でも無いよ。じゃあ、いくぞ。1,2の3!」
大の男が三人がかりで引っ張っても、なかなか扉は開かなかった。そんなに大きな扉ではない。クローゼット自体の幅が1メートルぐらいなのだから、1枚の扉の幅はせいぜい50センチぐらい。それが、どうしてこんなに固いのか。
「くっそおおお~!」
進藤が真っ赤な顔をして渾身の力を振り絞っている。負けじとおれたちも懸命に引っ張った。
バキ!
鈍い、木が折れるような音がして、ようやく扉は開いた。
ギイイイイィ。
錆びた蝶番が立てる嫌な音を響かせながら、それは観音開きに開いて行く。
中は、ごく普通のクローゼットだった。下段には三つほど引き出しが付いていて、なかなか使い勝手は良さそうな感じだ。だが、一見したところ、目的のものは見当たらない。
「引き出しの中かな?」
言いながら、進藤が引き出しを開けると、意外なほどのスムーズさでそれは動く。固いのは外側の扉だけだったらしい。
「ああ、あったあった」
引き出しの中から出てきたのは、ピンク色のプラスティック製と思しき携帯のような物だ。
「これだよね、本田さんv」
「そうそう、これこれv」
「あっ、それは!!!」
おれにも見覚えがあった。一番下の妹が持っていたのを見たことがあるぞ。
「それは確か、『魔法天使プリティーアッキーの魔法携帯電話ミスティーベル』だな!」
……………。
なぜか妙な間が、一瞬だがあった。
「…へえ…伊角さん、よく知ってるね。おれもそこまでは知らなかったな…」
進藤と本田が、何かまずい事でも聞いてしまったような顔をしてこっちを見ている。
えっ、なに? 何かおれ、変なことでも言った? えっ? えっ?
「これ、あの飲み会のとき、越智が持って来てたんだよな」
「そうそう、からかってやったら、いとこが忘れていったおもちゃの携帯をうっかり間違えて持ってきたんだって言ってたんだよな」
「そんなこと言って、ホントはおまえのじゃないのぉ? とか言ってからかったんだっけ…べつに深い意味は無いんだけどさ…」
心なしかこちらを避けるように二人が話し出す。?。変な雰囲気だ。
「ちょっと、貸してくれないか?」
おれが手を出すと、気まずそうにそれを差し出す。さっきから何なんだよ、おまえたち。気分悪いなぁ。そう思いながらも、おもちゃの携帯を調べてみると、思ったとおり、電源が入ったままで、しかも目覚し設定がオンになっている。設定時間を見てみるとAM7時に鳴るようになっているのだが、元の時間設定自体がおかしいらしい。今は夕方の6時なのに、これの時間はPM11時、5時間の誤差がある。これでは夜中の2時に電話が鳴るはずだ。
「進藤たちはこれの時間いじったりしたか?」
二人は同時に首を横に振った。
「…でも、電源と目覚ましのスイッチは…オンにしたけど…」
少しは反省してるのか、言い難そうに進藤が言った。
それはわかってる。確信犯だもんな、おまえたち。じゃあ、時間のほうはもともと狂っていたということか。なんて不運なんだ、和谷。
どんな音が聞こえるのか、取りあえずスイッチを入れて確認してみる。
「プルルルルル…プルルルルル…プルルルル…がちゃ」
ここまでは和谷の言うとおり。そして、
「もおすぃ、もおすぃ、ぅわとぅわぅすぃ、あぁっくぃぃぃ~、ああぁさぁどわぁゆぉぉぉ、ふぁぁゆぁくぅぅおぉぉきぃぃてぇぇ…」
地獄の底から聞こえて来るような、低い不気味な声が…
「うわあああ~! 怖え~! なんだこれぇ!」
「電池が切れかかってて、こうゆう風になったみたいだな」
「こいつは、マジ、和谷には悪いことしたなぁ」
本田が頭を掻きながらすまなさそうに言うのを見て、おれも心底和谷を気の毒に思った。
夜中にこれを聞いたら、おれでも怖いよ。
ちなみにあれは
「もしもし? わたしアッキーv 朝だよ? 早く起きてv」
と、言っているんだ。他にも占い機能やら、お話機能やらが付いていて結構遊べる。
いや、妹が遊んでいるのをたまたま見ていたことがあるから知っているだけだぞ。自分で使って遊んでたなんてことは断じて無いからな!
はっ!!!!!
まさか進藤たち…おれが詳しいからって、これで遊んでるとでも思っているのでは?!!
さっきから変な目でおれのことを見てるのは、もしかしてそのせいなのでは?!!
慌てて誤解を解くべく、口を開こうとしたおれを遮るように、進藤が声を上げた。
「あれ? 本物の携帯も入ってるぞ」
引き出しを閉めようとして、奥にもうひとつ、携帯が入っていることに気が付いたのだ。
「本当だ。前の住人の忘れ物かな?」
すでに充電切れになっているその携帯は、まだそう古いものではなかった。
「まだ十分使えそうなのになあ。伊角さん、これ、どうする?」
「取りあえずおれが預かっておくよ。ここを紹介した不動産屋にでも聞けば持ち主ぐらいわかるだろう」
「そっか、じゃ、もう用は済んだことだし、帰るとすっか!」
おれたちは、元のとうりに扉を閉めようとして、気が付いた。クローゼットの扉は、建付けが悪くて開かなかったわけじゃなかった。開かないように、ボンドで固定してあったのだ。
無理やり開けたから、変な具合に欠けてしまったりしている。
まずいな、ここ、賃貸なのに…
お互いに顔を見合わせたりしていたが、やってしまったことは仕方が無い。曖昧な笑みを浮かべると、何事も無かったかのようにさり気に扉を閉めて、帰ろうとした。
と、その時、
ギィイイイイイ
不気味な音を響かせながらクローゼットの扉が勝手に開いた。
「うわ! 気持ち悪リぃ!」
進藤が声を上げる。確かに嫌な音だ。
「建付けが悪いって、こういうことだったのか」
おれは再び扉に手をかけると、軽くそれを開閉してみた。
進藤がどういう事? とでも言いたげに、首を傾げながらおれを見る。
「たぶん、いくら閉めても開くんだよ。建付けが悪くて。だから、開かないようにしちゃったんじゃないか?」
おれの言葉になるほど~な顔をしている進藤の横で、今まで黙って立っていた本田が、突然、叫ぶように言った。
「じゃあ! ボンドで閉まっているクローゼットの中に、このおもちゃをどうやって入れたんだよ! あの時、みんなこの部屋に居たんだぜ? 和谷だって居たし…おれたちは和谷がトイレに行っている間に、みんなの見てる前で『これ』をテレビの後ろに隠したのに、おれたち全員が気付かないうちにクローゼットを開けて隠して、またボンドで閉めなおすなんて絶対にあり得ない!!」
青い顔をして、唇を震わせながら本田はまくし立てる。
言われてみれば、確かにそうだ。みんなが集まったあの日じゃなくても、ボンドで閉まっている扉を開けて、またご丁寧にボンドで閉めなおすなんて面倒をしてまでイタズラするような性質の悪い奴はおれたちの中にはいないだろう………たぶん。
じゃあ、一体誰が?
「もういいじゃん! これ以上考えても仕方ないって!」
そう言うと、進藤はもう一度扉を閉め、何処から持ってきたのかビニール紐で取っ手をぐるぐる巻きにし始めた。
「こうしとけば開かないんじゃねぇ?」
進藤の言うとおり、観音開きになっている扉の両方の取っ手を紐でぐるぐる巻いて繋いでしまえば開くはずはないだろう。見た目はともかく…
「一応問題は解決したんだから、もう帰ろうぜ」
言うなり、進藤はさっさと玄関に向かって歩き出した。慌てて、おれたちも後に続く。
部屋の灯りを消して、靴を履いて、今まさに玄関の戸を開けようとしたときだった。
ギィイイイイイ
思わず振り返った。その場に居た全員が。
どうやら聞き間違いではないようだ。
玄関からクローゼットは死角になっていて見えなかった。
けれど、あり得ないことだが、あれは確かにクローゼットの扉が開いた音だろう。
つるべ落としと言われるこの季節の夕日はすでに沈んで、まだ6時半にもならないというのに、もう外は藍色が濃くなり始めている。
灯りを落とした室内は、なおさら闇の気配が深い。
ごくりと誰かが息を飲む音が聞こえた。
風が出てきたのか、部屋の奥で窓ガラスがカタカタと音を立てている。
何か、嫌な空気が満ち始めているような気がした。なんだか空気が重く感じる。
意を決しておれが部屋へ戻ろうとすると、ふいに進藤が腕を掴んだ。
見ると、黙ったまま首を横に振る。
「…進藤」
「もういいじゃん、もう帰ろう?」
まるで懇願するように、おれの顔を見つめる。暗くてはっきり見えはしないが、微かな怯えが、そこにはあるような気がした。
「そうだよ、帰ろうぜ、伊角さん」
本田の声にもそれは滲んでいる。
……………。
「…そうだな、用はもう済んだし…帰ろうか…」
おれがそう言うと、二人がほっと安堵の息を吐いたのがわかった。
ドアを開けてマンションの通路に出ると、さっきまでの閉塞していた空気が嘘のように軽くなった気がした。いや、ただ単に灯りが点いているから、そう思うだけなのかも知れないが…
進藤たちは何も無かったかのように、いつもと変わりない様子で軽口をたたいている。ただ二人とも、不自然なほどクローゼットのことには触れようとしなかった。おれは黙って二人の後を歩いた。
「じゃあ、おれたちはこれで」
マンションの外に出ると、進藤たちは振り返った。駅へ向かう彼らはおれと帰り道が違う。
「今日はすまなかったな、つき合わせて」
「何言ってんだよ、元はと言えばおれたちのせいじゃん。こっちこそごめんな」
「おれも悪かったと思ってる。伊角さんも迷惑かけてごめん。和谷にも今度ちゃんと謝るからって、伝えといてくれるかな?」
進藤と本田が殊勝なことを言う。
「ああ、ちゃんと伝えておくよ」
内心、これに懲りて変なイタズラはもうしないでくれ、と願う。
じゃあ、気をつけてな。そう言って別れた。
最後までクローゼットのことは誰も何も言わなかった。
いや、もしかしたらこの先もずっと話さないのかも知れない。
人間、本当に怖いと思ったことは、案外、人には話せないものなのだろうか。
話すことによって、行動を起こすことによって、それが真実として再び自分の目の前に突きつけられてしまうのを、恐れるのだろうか。
おれにはわからない。
ただ、あのクローゼットの中から見つけた充電切れだったはずの携帯が、部屋を出てからずっとポケットの中で振動し続けているのを感じながら、さも何も気付いていないかのような素振りで、すでに街灯が灯り始めている道をおれは急いだ。
和谷になんと言おうか、ただそれだけを考えながら…
PS、おれはおもちゃの携帯の誤解を解くことをすっかり忘れていたため、この後暫くの間、進藤たちによって変な噂をたてられたのは言うまでも無い。
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やっちゃった…やっちゃったよワタシ…
作中の伊角さんを異様にとほほキャラっぽくしてしまいました(汗)。
ああ、もう自分でもどうしような感じです。
伊角さんファンの方、ごめんなさい(泣)。
ヒカルも性格変わってっぽいし…ほんと、どうしよう…
和谷くんのお話のはずだったのに、ほとんど出てこないし、あんまり怖くないし、
ツッコミ所満載のお話となってしまった!
どうするつもりなんだ!ワタシ! つづく(ええ!)
2004年10月9日 UP
14/12/17再UP
-竹流-
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