Change!Ⅱ





朝っぱらからするべく(!)、おれのパジャマのボタンを外していた高遠は、はた、と、何かに思い至ったらしく、急に手を止めて、おれをじっと見つめた。
おれは、困ってるんだか、焦ってるんだか、嬉しいんだか、なんだか自分でもよくわからない感情に囚われていて。でも、目の前の高遠のヌードに目が釘付けになってしまって。

結局、高遠の為すがままだったんだけど、高遠が手を止めたので、まだ脱がされずに済んだ。

「…もしかして…初めて、でしたっけ…」

何を言おうとしているのか、ピンと来たおれは、自然と憮然とした表情になっていたようだ。高遠が、ちょっと困ったような表情を浮かべた。
「え…と、ぼくの…せい…でしたね…」 赤い唇に指を当てて、少し思案するように、視線を逸らした。

ちょっと待て、たかとお。
もう、その顔だけでも、充分に色っぽいんだけど、それって、狙ってんのか?
しかも、毛布を挟んだ上からって言っても、おれの上に、すっぽんぽんで跨ってんだろうが!
あ…ありえねえ…
もう、すごく、目の保養…じゃなかった! 目の毒なんですけど?!
細身なのに、意外と豊かな、綺麗なラインの白い胸とか、その先についてる薄桃色の乳首とか、きゅっと、くびれたウエストとか、滑らかな丸みを帯びた女性らしい腰から、…その下に見えてる …淡い茂みも…

朝から刺激が強すぎるって!

じつは、さっきから、触りたくって触りたくって仕方ないのを、ずっと、我慢してるんだぞ! おれは!
…いや、たぶん『触ってくれたら、いいじゃないですか』とかって、高遠は簡単に言うだろうけど、おれにはそんなに簡単な問題じゃ無いんだからな!

だって、したこと無いんだぞ?
…いや、いつも、されてるけどさ。
もしも、傷つけたらって …考えたら…怖いじゃん。
だって、おれ、高遠のことが好きだから …傷つけたくないんだ…

~~~~人の気も知らないで、この男は…って、あれ?…違うな。今は女だよな。
ああ、もう、ややこしい~~~!!!
なんでこんなことに、なってんだよ~~~!
とか、ひとりで脳内パニックに陥っていると、少し冷やりとした感覚が、頬に触れた。
気がつくと、高遠の指が、おれの頬をいとおしげに撫でていた。
綺麗な顔が、おれの顔を覗き込んでいる。

「はじめ…」

聞きなれない声で、でも、高遠の夜の口調で、そっと囁かれて。ただ、それだけだったのに、身体の芯が、熱く熱を持ってしまった。
高遠には、それがわかったんだろう。
クスリと、笑みを浮かべると、身体を倒しておれに密着してきた。
はだけさせられた胸元に、高遠の柔らかな胸が押し当てられて、その、初めての感触に、一気に体温が上がった気がした。
今にも、唇が触れそうな位置に、高遠の顔がある。悩ましげな眼差しでおれを見つめる、月の色をした眼が、すぐ目の前にあって。それが、やさしげに笑みの形に眇められた。

「好きにしてくれて、いいんです…はじめになら、何をされても、平気です」
言いながら、唇を、何度も、軽く触れ合わせて。
「それとも…」
少し身体を起こすと、また、おれの頬に指を這わせた。
「ぼくが、リードした方が、いい?」
おれを見下ろしてくる、高遠の白い顔に黒髪が掛かって、赤い唇は、笑みを形作っている。
濡れた光が瞳に滲んで、切なげな潤んだ眼差しで、おれを見る。

なんでこう、色っぽいかな~~~?
高遠の誘惑に、抗える男がいたら、お目にかかってみたいよ、おれは。

おれが、ゆっくりと身体を起こすのを、嬉しそうに見ていた高遠は、なぜか突然、あっ、そうだ! という表情を浮かべた。
…こんな場面で、何を言い出す気なんだ? 一体?
たまに、とんでもないことを言い出すのを知っているだけに、ちょっとドキドキしてしまう。

…不安でな。

「え~と、はじめは、なんにも知らないんですよね? 女性の身体」
「…うっ、そう言われると …そうだけど…」
「じゃあ、ちょっと、レクチャーした方がいいですか?」
「はい?」

レ、レクチャーって、なんですかそれは…?
おれ、すでに、ニッチもサッチいかないような状態になってるんですけど、何か、講義でもなさるんですか?
いや、多少の知識なら、雑誌やビデオで知ってますって。
と、頭の中だけで色々考えていると、おれの上から高遠は降りた。
何をするのかと、不審に思って見ていたら、この、広いベッドの上で、後ろ手に手をついて、まるで体育座りよろしく、膝を立てて足を前に出したかと思っていると…
おもむろに、おれの目の前で、足を大きく開いて見せた。

なに考えてるんだ~~~!!!!!

ちょっと待て! あ、あの、全部丸見えなんですけど?!!
えっ、えええええ~~~?!!! 
恥じらい無いのも、いい加減にしてくれ~~~~!!!!!

「わかります? これがですね…」
高遠…普通になんか、マジでレクチャーする気だし…

あああ! もう!!

突然で、驚いたんだろう。
眼を大きく見開いて、完全に素の表情を浮かべていた。
おれの、下で。
気がつくと、おれは、高遠を、押し倒していた。
急いで身に着けていたものを脱いで、そのまま覆いかぶさると、高遠が首に腕を巻きつけてくる。

「高遠、誘惑すんの、上手過ぎ」
「ふふ、その気になってくれて、嬉しいですv はじめは、いつも恥ずかしがって、自分から来てくれないから」
「…うっ、だって、…それは、たかとおが…」
「ああ、もう、いいです……はじめ…はやく…」
高遠が、首に回した腕に力を込めて、おれを引き寄せる。そして、唇が触れる直前。

「…ぼくを…食べて…」
そう言って、瞼を閉じた。



深く、唇を重ねて。
舌を絡ませ合って、互いの口腔を探りあう。
その間にも、手は相手の身体を求めて、忙しなく動いてる。

高遠の、胸に、触れて。
柔らかな感触に、胸の中を熱くしながら、壊れ物にでも触れるように、やさしく触る。
先についている小さな膨らみを、親指で弄ぶように刺激していると、硬く尖って、その存在を主張し始めた。
首筋に、唇を滑らせて、滑らかな素肌を、味わうように舌を這わせて。
ゆっくりと、胸元へと降りてゆく。
触れていない方の胸の先に吸い付くと、こちらは舌で刺激して。じきに、硬く尖り始めたそれに軽く歯を立てると、高遠の身体が、小さく震えた。
そっと、高遠の顔を伺うと、何かを堪えるように硬く目を閉じて、赤い唇を少し開いて、薄っすらと、頬を染めている。

………たかとお、結構、かわいいじゃん…

いとおしさが、胸に溢れて、口づけを落とすと、きゅっと、頭を抱きしめられた。
唇が離れると、欲望に濡れた瞳で、おれを見つめる。
惹き込まれてしまいそうな、月色の瞳が、淫らな光りを湛えている。
「はじめ…」
高遠は、自分の胸に置かれているおれの手を取ると、その手を自分の股間へと導いた。
「…ねえ、こっちも、触って…」
悩ましげに呟かれて、思わず唾を飲み込んでしまう。
「もっと、気持ち良く…して…?」
言いながら、おれ自身にも指を絡めてくる。
おれの感じるところを、知り尽くした指が、動いて、おれを攻め始める。ゆっくりと、焦らすように。真っ直ぐに、おれを見つめたまま。

「…たかとお…」
おれも、答えるように、指を使って探り始める。
そっと開くように、割れ目に指を滑り込ませると、小さな突起に触れた。それに、玩ぶような刺激を与えると、高遠は、まるで、切ないように少し眉を寄せて、軽く唇を噛んだ。
それでも、目は閉じないで、おれを見ている。
おれも、高遠の顔を見つめたまま、さらに指を、奥へと這わせた。
ぬるりとした感触が、指先に触れて、もっと、奥へと、その狭い場所へと差し入れると、高遠は、今度は耐えられないように、ぎゅっと目を閉じて、首を逸らせた。
はっと、小さく息を飲む音が聞こえる。
おれを刺激していた、高遠の指は、止まっていた。

少し指先を動かすと、高遠が、敏感に反応する。
「…あっ…だめ…っ」
微かに、身体を震わせて。
「いたい?」
聞くと、ゆるゆると首を横に振る。
「…そうじゃ、無いんです…ただ…」
言いながら、全身を朱に染めて、薄く眼を開けた。
「こんなの…初めてで…」
「たかとお…」
もう一度、軽く口づけると、おれは高遠の足の間に、身体を滑り込ませて。
そして、そのまま、足の間へと顔を埋めた。

「…っ…あっ…」
ささやかな突起を口に含むと、高遠の唇から、堪えきれずに声が零れる。
おれの頭を、きつく足で挟んで、小刻みに身体を震わせる。
おれは、執拗にそこを攻めた。指は、高遠の中に、入れたまま。
舌を使って、指を動かして。

「………はっ…あ…はじめ…っ…もう…っ!」
やがて、高遠の唇から限界を告げる声が零れると、大きく身体が震えて、おれから逃れようとするみたいに、身体を逸らせた。
差し込まれたままの、おれの指を濡らしながら、高遠はぎゅうぎゅうと、締め付けてくる。

「たかとおっ!」
おれは、高遠の足をつかむと、大きく広げさせて、そして、そのまま、自身を埋め込んだ。
もう、高遠のことを気遣っている余裕は、おれにも無かった。
初めての身体を、一気に、貫いていた。

「はっ、あ、あああああっ!はじ…めっ!」
まるで、悲鳴のような声を洩らして、高遠は、大きく仰け反っていた。
その白い首筋に、胸元に、唇を落として、おれは所有の証を刻む。

高遠の中は、とても熱くて、狭くて、その上に、おれを締め付けて来る。
腰を動かすと、絡み付いて、激しい快楽をおれに与える。

もう、夢中で。
なにも、考えられなくて。

激しく、揺さぶって。
深く、繋がって。
淫らな水音が、満ちて。

高遠の喘ぎが、耳に甘く、響く。

そして、初めて見る、乱れた高遠の姿は、どうしようもなく、綺麗だった。
硬く閉じられた瞼も、堪えるようにきつく寄せられた眉も、絶え間なく、喘ぎを洩らす赤い唇も、恥らうように、朱に染められた頬も。
乱れた黒髪を、汗ばんだ頬や額に張り付かせながら、そのすべてで、高遠は、おれを煽っていた。

「ああっ…うっ!」
突然、やって来た限界に、おれは抗うすべを持たなくて、高遠の中に、欲望をすべて吐き出していた。
「…ああっ!」
高遠は、その瞬間、身体を震わせながら、おれを抱きしめて。一段と激しくなった突き上げに、堪えてくれていた。


ぐったりと、力無く高遠の上に身体を委ねて、荒い息を吐く。
心臓が、ばくばくと、激しい鼓動を主張している。
まるで、100メートル走を、全力で走ったみたいな疲労感。
それでも、高遠の身体を抱きしめて、まだ、中に自身を埋めたまま、おれは、甘い余韻に浸っていた。

どのくらいたったろうか、おれは身体を起こすと、ようやく、高遠の中から自身を引き抜いた。そしてその時、流れ出した体液に混じる紅い色を認めて、おれは、高遠も初めてだったことを思い出す。
高遠は、手足を投げ出したまま、いまだ、動かない。
その顔を覗くと、もう、苦しそうな表情は浮かべていなかった。けれど、汗ばんで、乱れた髪もそのままで、頬の赤みは引き、白いその肌は逆に、青ざめてさえ見える。
目を閉じたまま動かない高遠に、無理をさせ過ぎたのだと、気がついた。自分のことに手一杯で、高遠の身体を思いやる余裕が、おれには無かったんだ。

「たかとお? 大丈夫か?」
白い頬に手を当てると、気だるげに、緩慢な動きで、瞼を擡げた。
うっとりと、そのくせどこか夢見るような眼差しで、高遠はおれを見つめる。
窓から差し込む、カーテン越しの淡い光りが、瞳の中で揺れている。
やさしく、高遠の頬に絡んだ髪を梳くと、おれは唇にそっとキスを落とした。
「好きだよ…」
耳元でそっと囁くと、高遠は嬉しそうに、投げ出されていた手を、ゆっくりと持ち上げて、おれの首に回して。
そして、おれを引き寄せると、ぎゅっと抱きしめてきた。
「た、たかとお?」
「…はじめ…」
少し腕を緩めて、おれの顔を覗き込んだ高遠は、もう、にっこりと笑顔を浮かべている。

「すっごく、よかったです!」
「はい?」
「さすがに、ちょっと不安だったんですけど…でも、よかったですよ! 女性って、こんな風に感じるものなんですねえ。たまには、こんなのも、新鮮でいいですよvv」

あんたって人は…

どこまでも、前向きだよね…
うん、おれ、時々、ついていけないかもって、思うときがあるよ。
普通、落ち込むだろ? 男が女に、なんて、有り得ないことが起こったら。
いや、さすが、高遠だよ…
…心配して、損した!!!

脱力しきって、仰向けに転がっていると、突然、高遠が、ぽつりと洩らした。
「…はじめの童貞を、ぼくがもらえて、よかった…」
ベッドに、うつ伏せて、顔だけこちらに向けて。
何も纏わない、綺麗な身体のラインが、女性らしい滑らかさを強調している。

「なんだそれ」
ちょっと、もわもわしそうな気分を抑えながら、おれが答えると、
「だって、はじめ、前に言ってたから…」
と言う。おれ、何か言ったっけ?
「なんて?」
「『おれ、一生童貞なのかなあ』って、それでぼくが、『じゃあ、ぼくが相手になりましょう』って言ったら、『ナイスバディのお姉さんじゃないと勃たない』って」

確かに!

「だから、ずっと、不安があったんですよ…いつかはじめが、女の人に盗られちゃうんじゃないかって…」
切なげな色を浮かべて、高遠がおれを見つめる。
「そんなことあるわけないだろ!」
ちょっと、むっとして言い返したけど、高遠の眼は真剣で、おれは、黙るしかなかった。
「でも、今のぼくなら、はじめは愛してくれるでしょ? ぼくもはじめに、ぼくの初めてをあげられたしv 結構、嬉しいんですよvv」
「たかとお…」
おれが、ちょっと感動していると、また、ぴったりと身体を寄せてきた。

…おい…なにやら、不穏な空気が漂ってないか?

「ねえ、はじめ?」
ごろんと横になっているおれに、高遠はさらに身体を密着させて、足まで絡ませて。
そして、赤い唇で、こう言った。
「もう一度、しましょう?」
「はああああ?!」

目の前の美女は、悩ましげに濡れた唇を擡げて、色っぽい笑みを浮かべている。
「だって…良かったんですけど…もう少し、楽しんでいたかったのに、はじめが先にイっちゃったんですよ」
だから、最後まで、満足させて?

カミサマ。
このままだと、おれ、過労死させられちゃうんじゃないでしょうか?

目の前の綺麗な悪魔に抗うことなど、おれにはできそうに、無かった。




05/09/25

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もう、どうしよう~(泣)。
どんだけ、頭、腐ってるんでしょう?ワタシ?
かなりキワモノな気がしますけど、裏なんで、勘弁してください(大泣)!
ワタシ、これでも、れっきとした高遠ファンですからね!
ええっ!誰が、なんと言おうが!!
そして、まだ、続きます!!!

                                          
05/09/25UP
14/09/30再UP
-竹流-


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