風を切る音 Ⅴ
高遠の背中にしがみついて、目を閉じていると、そんなに走らないうちにバイクは止まった。
目を開けると、どうやら何処かの建物の中の駐車場のようで、なぜかワンスペースごとにわざわざ壁で仕切ってある、変な駐車場だった。
「こんな所で、申し訳ないんですけど」
そんなに、時間に余裕が無いので…
高遠はそう言って、言葉を濁した。
「何処?ここ…」
ヘルメットを外しながら、そう訊いたおれに、高遠は少し笑って。
「すぐにわかりますよ。ああ、鞄はそのまま、胸に抱えておいたほうがいいかもしれませんね」
などと、意味のわからない事を仰る。
髪を下ろしたままのおれが、訳もわからず首を傾げると。
「うん、そうしていると、女の子に見えるから、大丈夫ですよ」
と、さらに意味不明なことを、仰る。
「一体なんなんだ?」
「いえ、きみが、気にするだろうと思うから、そうした方がいいんじゃないかと…ああ、時間がもったいないですね。行きましょうか」
そのまま手を掴まれて、駐車場の奥にある入り口から中へと入った。
なるほどね、高遠の言ってた意味が、すごく、よく理解できました。
今、おれの目の前には、たくさんの部屋の写真が並んでるパネルがあって。
その、どの写真にも、でっかいベッドがデンっと、ど真ん中に写っている。
「どの部屋にします?」
しれっとした声で、高遠が訊いてくるけど、おれは顔を上げられない。
「…ラブホじゃね~かよ…」
どこかに監視カメラがあって、おれたちの姿は映ってるはずだ。
やばいよなあ、おれ、制服のままなのに…
「ああ、気にしなくても大丈夫、バレませんよ。たとえバレても、誰も気にしませんって。こういうカップルも、最近は増えてるらしいですから」
平然と言ってのける高遠に、思わず、やばいのも忘れて、顔を上げて食って掛かっていた。
「でも! こんな格好で鞄抱えてたら、援交かって疑われるかもしんないだろ!」
「そんなんじゃないんですから、平気でしょ?」
「でも! もしも、警察に通報されたりしたら、あんた、どうする気なんだよ!」
「その時は、その時ですよ」
にっこりと、綺麗に微笑む高遠に見つめられて、おれは瞬時に全身が熱くなる。
顔が、火照ってしまっているのがわかる。
ちくしょう、悔しいなあ。
高遠は、こんなにも涼しい顔してんのに、おれって、なんでこんなにわかりやすいんだろう? ああ、もう、いいよ。おれも、開き直ってやるから。
おれがそんなことを考えている間に、高遠は部屋を決めたらしく、ある部屋のパネルにタッチした。
画面の写真に触れると、選ばれた部屋の明りが消えるようになっているらしい。
ふ~ん、と、おれが感心して見ていると、そのまま、また手を引かれた。
エレベーターの横についているライトが、点滅してこっちだと知らせている。そのまま乗りこむと、すべてが連動しているのか、勝手にその階へと上がっていった。
扉が開いて、薄明かりが照らす廊下に出ると、今度は、壁に沿って点滅している案内灯が行き先を示していて、それに沿って進んでゆくと、部屋番号が点滅している部屋があって、そこが目的の部屋なのだと教えていた。
へえ~、こうやって、誰にも合わずに部屋に行けるようになってるんだ。またまた、感心。
扉を開けると、目の前に小さな玄関らしき空間があって、ちゃんと靴を脱ぐようになっている。ふうん、ここでスリッパに履き替えるんだな。
そして、部屋に入る手前にも扉があって、そこで指定された料金を支払うと、室内への扉が開かれた。
中に入るとすぐに、意外と座り心地の良さそうな、革張りと思しき応接セットが置かれていて。そのさらに奥の部屋には、これでもかっ!ってくらい、でかいベッドが鎮座しているのが見えている! おおっ、さすがはラブホ!!
妙に納得しながら、入り口近くにあるドアを開けると、やたら、ラブリ~なトイレになっていて。そこは、さすがにちゃんとした個室だったんだけど、…風呂が…凄かった。
なんか、ええええええっ?!ってくらい、ガラス張りになってて、なんかもう、覗いてくださいっ!って言わんばかりなんですけどっ!!
しかも、噂で聞いたことのある、変な形の椅子まであるぞっ!!!ってか、なんに使うんだか、ふわふわそうなビニール製と思しきマットレスまである!
いや、じつは、来たことは初めてなんだけど、エロビデオとかで見たことくらいならあったりするんだよね。でも、こんな風になってるんだって言うのは、実際に来てみないとわからないもんだよなあ。
いやいや、なんか勉強になりましたって。うん、じつは、興味津々だったりしてなv
「そんなに、珍しいんですか?」
あっちこっち、覗いて回ってたら、不意に後ろから抱きすくめられて、そう言われた。
そうだった…
別に、ここに探検に来ているわけじゃ、ないんだった。
「…たかと…あっ!」
首筋に、後ろから口づけを落とされて、途端に、身体が震えた。
「ほかの事になんか、気を取られないで。今は、ぼくのことだけを、考えていて」
くるりと、簡単に身体の向きを変えられて、高遠のほうに向き直ったおれが、何かを言おうと口を開いたら、そのまま、唇を奪われた。
今日の高遠は、なんだか大胆な感じで。
強く抱きしめられたおれの身体に、すでに硬くなって、おれを求めている高遠自身が当たってる。
それを感じているおれもまた、煽られるように硬くなり始めて。
男の身体って、単純だよな。
簡単に欲情して、ふしだらだなあと、自分でも思ってしまう。
抱かれる側なのにね。
抵抗が、無いわけでもないのに、おれの身体は高遠を求めて、簡単に熱くなる。
口づけあったまま、ベッドへともつれ込んで。
そして、互いの着ているものを、剥ぎ取る勢いで脱がし合う。
どんなに取り繕っても、おれも、やっぱり高遠が欲しいんだ。
それが、たとえ、受ける側であっても。
どんなに、苦痛を伴っても。
それは、最終的にもたらされるものが、快楽だからなのか。それとも、高遠だからなのか。
おれにも、よくわからないんだ。
全部、脱いで。
互いに、何ひとつ纏わない姿になって。
触れ合う温もりは、なんて、愛しいのだろう。
柔らかな手触りは無くても、高遠の肌は滑らかで、とても心地良い。
なのに、高遠が突然、おれから身体を離してしまったから、おれは、閉じていた瞼を開けた。
もう、こうなってしまうと、一時も、離れていたくないのに。
「たかとお?」
不満げに声を上げると、おれの顔のすぐ横に手をついて、上から覗き込んでいる。
おれの視界には、その白く引き締まった身体を、惜しげもなくさらして微笑んでいる高遠越しに、後ろの天井も映っている。
あれっ?と、思った。
高遠の選んだこの部屋のことを、本音を言うと、白くて何の飾り気もない、無機質な印象の部屋だと感じていたんだ。色んな部屋があったんだから、もう少し、面白そうな部屋を選んでも良かったのにと、内心、考えたりしていた。けれど、今、高遠の背後に見えている天井は、丸くドーム型をしていて、灯りは、そのドーム型の天井を遮らないためになのか、すべて間接照明の形を取っている。
「気が付きました?」
小さく笑って、高遠は、枕もとの照明を操作するためにあるのだろうパネルに手を伸ばした。
次の瞬間、ピッという小さな電子音とともに、部屋の明りが消えて、真っ暗になって。もう一度、またピッと音がしたと思ったら、今度は綺麗な星空が、目の前に広がっていた。
真ん中を、天の川が流れている。
「プラネタリウム?」
「ええ、面白いかな?と思いましてね。気に入りました?」
「うん、こんな風になるなんて、思いもしなかった…」
「東京では、こんなに綺麗な星空なんて、プラネタリウムぐらいでしか見られませんからね。でもいつか、こんな星空を、ふたりで見に行きましょうか」
「ほんと?」
「ええ、約束しますよ」
「きっとだぜ?男に二言は無しだかんな」
「きみに、嘘はつきませんよ」
「…そんなこと言って、嘘つくんだろ…」
「さあ?…どうでしょうね…」
すぐ目の前で、唇を触れ合わせながら、そう囁き合って。
そのまま、また口づけた。
深く、探りあって。絡めあって。奪い合って。
それから高遠は、おれの身体のすべてを確かめるように、唇で辿り始める。
首筋から、胸元へとそれはやってくると、舌先で、その小さな突起を弄る。あるいは強く吸い付いて、おれを翻弄するんだ。
もう片方の胸の飾りは、指先で微かな刺激を与え続けられて。それを、左右交互に繰り返される。
高遠に触れられるまで、男のおれがそんなことをされて感じるだなんて、考えたことも無かったのに。けれど、女の子みたいに触られて、おれの身体は、今まで知らなかった快感に震えた。
全部、高遠に教えられて、高遠に開発されて。
もう、高遠じゃないと、駄目なのかもしれない。
そんなことを考えてしまうくらい、高遠はおれの感じる場所を、心得てる。
その綺麗な指先で、その薄い唇で、おれを溺れさせて。
「は…あ…」
恥ずかしいのに、いつもおれの唇からは、吐息と共に声が漏れてしまうんだ。
そして、高遠の唇がおれ自身を含んでしまうと、それだけで、体中の神経が、ただ、その一点に集中して、他のことは何も考えられなくなってしまう。
温かくて湿ったその感覚は、今までに知ったどんな感覚よりも鮮やかに、痺れるほどの快感をもたらして、おれはいつも無意識のうちに、高遠の髪を指に絡めている。
そうしているうちに、声を上げるのが恥ずかしいとか、そんなこともわからなくなって、全身を駆け巡る快楽に飲み込まれてしまって。慣れていないおれは、すぐに限界を訴える。
「ああっ! だ、だめ…たかと…出ちゃう…」
おれが、身体を震わせながらそう言うと、ようやく高遠は、おれを、その熱い口の中から解放して、
「じゃあこのまま、一度、先にイッてください」
すっぱりと、簡単に言われてしまった。
「えっ…で、でも…」
「今日は、なにも用意してこなかったので、きみのを使いたいんです。だから、先にイッて?」
言いながら、今度は手で、おれを刺激し続けている。
器用な指先が絡みついて、的確に感じるところを刺激されて。
高遠の唇が、おれの身体のあちこちを、探るみたいに彷徨うから。
もう少し、焦れていたいのに、呆気なくおれはイッてしまった。
本当は、ひとりだけでイカされるのは嫌なんだけど、今日は、仕方ない…
「あああああっ!」
それは、登りつめてゆくような、感覚。
それは、真っ白になってゆくような、快楽。
高遠に導き出される快感は、最高に …気持ちいい。
荒く息をつきながら、ようやく目を開けると、目の前に降って来るんじゃないかと思うほどの星空が広がっていて、その中で、高遠が黒い影になっているのが見えた。
「よかった?」
そっと、おれの頬に触れながら、高遠がやさしい声で訊いてくる。
暗くて見えないけど、どんな表情でおれを見ているのか、その声だけで、わかる気がした。
「うん…今度は、高遠の番だろ? 好きにしてくれて、いいよ…」
おれがそう言うと、くすっと、笑う気配。
「可愛いことを、言ってくれるんですね…」
そして頬に、チュッと音を立てて、柔らかく、キスをされた。
おれの足を曲げて開かせると、高遠は、手の中に吐き出されたおれの精液を、中指に絡めるようにすくって、そして、これから繋がりあうための場所に、ゆっくりと塗りはじめた。
丁寧に塗り込めながら、その指を、躊躇いも無く、そのまま中へと差し込んでくる。
ぬめりを纏わり付かせた指先を、そこが何の苦も無く飲み込むと、高遠は中の空間を広げるために、抽出入を繰り返しながら、指を動かしはじめた。
「うっ…」
違和感に身体が震える。
おれは、まだ、息も整わないままだ。
そんな身体は、いつにも増して、敏感になっているらしい。
「大丈夫ですか?」
「うん…へいき…」
そうは答えているけれど。
高遠とは、もう、何度となく繋がりあっているのに、なのに、未だに慣れたとは言えないのが、正直な所。
嫌なわけじゃないんだ。
でも、初めてのときの痛みを覚えているからなのか、身体が、どうしてもかまえてしまう。
高遠もそれをわかってくれているんだろう。
いつも、ゆっくりと時間を掛けて慣らしてくれて、そして、おれに負担を掛けないよう気を使ってくれる。
高遠はやさしいと思うんだ。
冷酷な、殺人犯なのに。
とても、そんな人間だとは思えないほどに、高遠は、おれにやさしい。
目の前には、小さな偽物の綺麗な星空。
この星空と同じように、この高遠のやさしさも、綺麗な偽物なのかな。
それとも、これが本当の高遠なんだろうか。
わからないけれど、高遠を受け入れて、すべてを分かち合いたいと思っている、この自分の中の想いだけは、確かな本物。
…なら、それでいいのかもしれない。
きっと大切なのは、高遠を想う、おれの気持ちなんだと、思うから。
「…う…」
いつの間にか、三本に増やされていた指の圧迫に、思わず、声が漏れた。
「つらいですか?」
おれの声が、苦しそうだと思ったのだろう。高遠はやさしくキスを繰り返しながら、おれにそう訊いた。
「へ…いき…」
息が震えて、上手く声にならなくて。それでも、なんとか声を振り絞って、おれは答える。
「…はじめ…」
そんなおれの答えに、おれの中を解していた高遠の指が、動きを止めた。
そして、そのまま指を引き抜いた高遠が、再びベッドヘッドに手を伸ばしたのがわかった。
「…?…たかとお?」
何をしようとしているのかわからなくて、おれが不安げに声を出したのとほぼ同時に、小さな電子音が聴こえて、微かなオレンジ色の光が、ベッドヘッドについているライトに灯った。
天井に映っている星の光が、わずかに薄くなる。
「すみません、どうしても、きみを見ていたいんです」
そう言うと、身体を起こして、おれの足を持って大きく開かせた。
「力を抜いていてください」
どうしても、構えてしまいそうになるおれは、少し不安な表情をしていたのかもしれない。
高遠は、おれの足の膝裏を持って、ゆっくりとおれの身体に向かって倒しながら、自分もおれの上に身体を倒してきて。
高遠自身がおれの、その部分に触れると同時に、おれに口づけてきた。
手を足から外して、もう、自分の身体だけで、おれの足を押さえて。
「少し、我慢してくださいね」
耳元で、そう囁くと、また、口づける。
巧みな舌の動きに、おれは翻弄されて。下からは、高遠自身に突き上げられて。
けれど、少しずつ押し入ってくる圧迫に、だんだん、キスどころではなくなってしまって、高遠から顔を背けるようにして、キスから逃れた。
もう、息が、上手くできなくて。
苦しくて、やっぱり少し、痛くて。思わず、シーツを掴んだ。
「…ううっ…くっ…」
「…はじめ、もう少しだけ、我慢して」
高遠は、おれの顔中にキスを降らしながら、おれを傷つけないために、ことさらゆっくりとおれの中へ押し入ってくる。
本当は、もっと性急に、おれの中に入りたいんだろうと思うんだ。そういうのは、おれも男だからよくわかってるつもりなんだけど、でも、いつも高遠は何も言わずに、慎重さを崩さない。
絶対に、自分の欲望を、一方的に押し付けてきたりはしない。
こんな瞬間に、愛されてると感じたりするんだけど、おれって単純かな。
だって、相手のことを大切に思ってなきゃ、我慢なんてできないだろ?
違うのかな?
「大丈夫ですか?はじめ?」
高遠が、少しばかり余裕の無くなった声で、おれに訊いてくる。おれは、おれの中に埋め込まれた高遠の圧迫に、耐えることにいっぱいいっぱいになっていて、目を開けることも出来ずに、頷くことしか出来ない。
高遠が、おれの奥深くにまで入り込んで、熱く、脈打っている。
高遠の微細な動きすら、ダイレクトに伝わってくるようで、おれはただ、懸命に馴染むのを待っている。
以前よりは慣れたけれど、やっぱり、異物感と排泄感に襲われるのは、どうしても否めない。でも、こんな感覚も、もっと慣れれば克服できるのかな。
泣きたいわけじゃないのに、堪えているうちに、どうしても涙が浮かんできてしまう。
高遠は、そんなおれの涙をゆっくりと唇で拭うと、点けていたベッドヘッドの灯りを、再び落とした。
「はじめ、目を開けられますか?」
高遠の声に、そっと目を開けると、また、満天の星空が暗い空間に浮かんでいる。
「こうしていると、まるで宇宙空間に、ふたりだけで浮かんでいる気分ですね…」
「うん…」
高遠の言葉に、そう返事をしながら、おれはぼんやりと、偽物の星空を見つめた。
不思議な気分だった。
本当に、宇宙空間にでもいるような、そんな奇妙な浮遊感さえ、覚えるほどに。
高遠は、繋がりあったまま、おれの上にぴったりと身体を重ねていて、これ以上ないほどに、今、おれたちはひとつになっている。
ふたりだけで。
何もない世界で、温もりを分かち合って。
このまま、どこまでも、堕ちてゆこうか。
ふと、覚悟にも似た想いが、頭の中に浮かんで。
ああ、おれはたとえ闇に堕ちても、この人が好きなんだな…
そんなことが、突然、理解できた。
「まだ、つらいですか?」
「ううん、もう、動いてもいいよ」
高遠の身体を、ぎゅっと抱きしめると、おれは言った。
「本当に、大丈夫?」
「うん」
おれの言葉に、少し身体を起こすと、高遠は、ゆっくりと慎重に、抜き差しを繰り返し始める。
それは、ごく単調な動作。なのに、繋がりあった場所に、今までとはまったく違う感覚をもたらすんだ。
痛みでも、圧迫でもない。おれ自身を直接刺激される快楽とも違う。けれど、それは間違いなく快感で。
高遠自身に、直接刺激されながら高まってゆく快楽に、どうしようもなく乱されて、溺れさせられて。まるで、女の子みたいな嬌声が、おれの唇から溢れる。
「ああっ…あっあっ…はっ…あああ…」
そんなおれを、いつも高遠は、優しい眼差しで見つめながら、抱いてくれる。
「好きですよ」
そう、言ってくれる。
だって、どうしようもないんだ。
高遠と、ひとつになっていることが、嬉しい。
高遠が、おれの身体で感じてくれることが、嬉しい。
全部、嘘でも構わないよ。
全部虚構だとしても、おれの、この想いだけは、変わらない。
それさえ、わかっていれば、それでいいんだ…
………。
…でも、今日はどうやら、それだけでは収まりそうになかった。
ホテルのベッドは、やたらとスプリングが利いていて。
だから、おれは、どうしていいのか、ちょっと困り始めていた。
「あっ!…ちょ、ちょっとまっ…あっ…た、たか…っ…ああああっ!」
「なに…? はじめ?」
高遠は、動きを止めもしないで、普通に聞き返してきた。
おれが待てっつってんのに、この男はっ!
「ま、…待って…っ!…」
しつこく食い下がると、ようやく高遠は動きを止めた。
「なんですか?」
何気に、声が不機嫌そうだぞ?
暗くて顔は全然見えないのに、プラネタリウムの星の明かりで、形だけが浮かび上がって見えてるから、なんか余計に、怖ええよ。
う~ん、そういや今日は、いつになく時間を掛けて繋がったからなあ。もう、限界まで我慢させちゃったんだろうなあ。
とは、思うんだけどさ。
でも、おれも、これはちょっと困っちゃうんだよね。
「たかと、このベッド…スプリング良すぎ…」
「それが?」
「…いや…だから…あの…」
そんな風に言われると、答えづらい。と、なにやら、高遠はピンと来たらしい。
「ああっ! スプリングが利きすぎてて、動くたびに身体がいつもより揺さぶられちゃうんですね?」
言うなり、おれの返事を待たずに、再び動き始めた。
「やっ…たかとおっ!」
「大丈夫ですよ、そのまま感じていて。絶対、いつも以上に気持ちよくしてあげますからv」
「たか…あっ…ひゃ…ん……ああっ!…っ…や、やだっ!…あああっ…」
結局、スプリングのやたら利いているベッドで、激しく揺さぶられて。いつもとは違う角度で入り込んでくる高遠に、普段は触れない場所にまで刺激を与えられて。
咽喉が嗄れるんじゃないかと思うほど、啼かされて、喘がされて、乱されてしまった。
目を開くと、見える星空も、おれを余計乱れさせたのかもしれない。
フェイクだとわかっているのに。
まるで、この世ではないところにいるような。
自分が自分ではないような。
そんな気がして。
「…あっ、は…あっあああっ!…た…かと…っ!」
深く突き上げられた瞬間、思わず、高遠の背中に爪を立てていた。
「…っ…好きだよ…はじめ…」
熱く囁かれて、口づけられて。
また、涙が零れていた。
生理的なものなのか、そうではないのか。
自分でもわからないまま、一段と激しくなった高遠の突き上げに、堪えられなくなったらしいおれの神経は、そのまま、ブラックアウトしてしまった。
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06/02/25
_________________
いや、すいません(汗)。
あんまりエロく無い気がする上に、よくわからない展開に…
ええ、「ラブホ」設定なんですね~。たぶん、こんな感じだったと思うんですけど///
いや、今の最新型のはどうなってるのか、わかりませんけど////
しかし、長いって!裏!
ホントに、これでいいんじゃろか?
最近、どうにも作文が書きにくくって。納得のいく文を書けないのですが、とりあえず、暫くあがいてみようと思っています。
こんな感じですので、楽しんでいただけたかどうかわかりませんが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございましたv
「風を切る音Ⅵ」では、また、表に戻る予定です。
次もまだ、場面はこの設定のままなんですけどね(笑)。
ま、いっかv
-竹流-
06/02/26UP
14/12/07再UP
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